遺産理論

藤原 惠洋 日本近代建築史学・芸術文化環境論・文化資源学・文化政策学

建築・都市・生活文化デザインを横断する日本の近代化過程を実証的に論考、同時に参画型共生社会の実現に向け、市民参加型まちづくりや幅広いワークショップ概念の啓発活動を展開し実際のまちづくり現場を先導している。さらにアートと社会を結ぶ紐帯づくりを理念面と実践面の両面から進め、フィールドワーク、アートプロジェクト、地域再生、創造都市、世界遺産への複合的視点を基軸に研究・実践を進めている。

朝廣 和夫 緑地保全学

「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要でない

これは、言い尽くされた、Rachel Carson女史のThe Sense of Wonderの一説です。 「緑地保全」の「保全」、”Conservation”という語は、英国では時に、「子供を育てるように」という例えで説明されることがあります。”Taking care”、すなわち、なるようにならない「自然」(子供)は、手をかけながら、目をかけながら育てること。もしくは、付き合うこと。家族が、地域が、自然と共に健やかな生活を持続的に時間と空間を共有するには、そのような姿勢と行為が必要です。

本研究室は、そのような人と自然の関係の中で育まれている都市近郊及び農山村地域における緑地環境を対象としています。緑地環境は、人々の保全管理により、その生物多様性、アメニティ、美観、農林産物の生産、災害防止などの公益的機能を支えています。持続的な地域の生活環境、自然環境の保全・復元を進めるには社会の課題にコミットし、歴史と自然のコンテクストを分析し保全のメカニズムを明らかにし、研究、教育、提言、実践を市民・行政・専門家との連携により行うことで、人と自然の関係に資する保全のデザイン(計画・設計)を社会に実装することを研究目標とします。その上位目標は、環境の美しさを感じ、伝えることができる人材を育成することです。

主な研究テーマは、里地・里山の保全、二次林の生態的研究、災害時の共助による農地復旧に関する研究、ボランティアツーリズムに関する研究、バングラデシュにおける緑地保全に関する研究などです。これらの研究の流れの中で、将来は、小規模ビジネスとして成り立つ里地・里山保全モデルはどのようにあるべきか。人口減少社会の中で中山間地の農村はどのように発展するべきか。伝統的な作物や景観をどのように価値付け産業開発を通じて保全していくべきか。互助−共助が連携できるコミュニティはどのように創出できるか。里地・里山保全の課題をアートにより展開できるか。今後は、より現実社会の課題に対応できる諸活動を展開したいと思います。

加藤 悠希日本建築史

人々が建築にどのような価値を見いだしていたか、どのような考えをもって建築をつくっていたか、という関心から、江戸時代・明治時代の神社や住宅を中心に研究をしている。現在の研究テーマ・関心は以下の通り。

  • 建築に対する人の関わり方の研究(つくる、使う、見る、壊す、など)
  • 日本建築史の断片ではない地域建築史の積極的な価値付け(福岡―九州―環東シナ海建築史の試み)
  • 建築史資料論・建築史学史による、既存の建築史学の枠組みの再検討

環境・遺産マネジメント

包清 博之 景観計画、緑地環境設計

主に,オープンスペースをはじめとする生活関連空間のあり方を,ランドスケープの改善の視点から計画論的に追求している。現在は,広域及び地域スケールからみた地域環境資源及び緑地資源の保全活用,生活者の視点からみた都市・地域景観のマネジメントと計画的枠組み,緑地環境設計などについて,調査・研究と実践に努めている。

主な研究テーマ

生活関連空間を基調とした都市・自然地域における緑地景観の形成に関する研究

  • 観光地を取り巻く広域道路の沿道景観のあり方
  • 都市における海浜地や河川等の水辺を取り巻く緑地系統と景観形成
  • 地域住民との係わりからみた住宅庭の住宅地における景観形成機能
  • 農村地域における棚田等の耕作地の特性からみた農村景観

谷 正和 環境人類学、文化人類学

南アジアを中心としたフィールドで、環境問題と貧困の関係を主なテーマとして、現地調査をもとに研究を実施している。これらの研究の目的は、途上国の住民の生活環境を改善するデザインの方向性を明らかにすることである。具体的なテーマとしては、地下水砒素汚染による健康被害と住民の社会的属性の関係、貧困層が及ぼす森林破壊への影響などがある。また、文化的理解に基づいた開発援助方法論の研究により、より持続的な援助効果が得られるような外部からの介入のあり方や、途上国の伝統的生活文化の要素の記録、価値付けによる文化的誇りの醸成方法論、日本の中山間地のいわゆる限界集落と呼ばれるエリアでの生活環境デザインの研究も行っている。

近藤 加代子 環境政策、環境経済、社会思想史

主な研究視座

  1. 持続可能な地域環境を、自然循環を基礎に回復し、あるいは創造する社会のしくみや社会のデザインを研究しています。 特に市民や企業が、主体的、持続的に、一定の地域環境に関心を持ってかかわりあっていくプロセスと行動要因を明らかにすることに関心を持っています。
  2. 異なる主体が社会合意を形成するため、そして効果的な政策を形成するために、地域づくりの形やデザインを客観的に評価していく「はかり」が必要になります。 LCAや各種の指標を、目的に合わせて開発していくことに取り組んでいます。

主な研究テーマ

  1. 地域におけるバイオマス利活用の課題、社会指標、主体分析。生ごみ、木質、家畜糞尿などのバイオマス資源を中心に。
  2. 地域における再生化のエネルギーの自律的展開の社会モデル。日本およびアジア。
  3. 市民参加型の地域循環型社会形成。NPOなどの活動分析。
  4. 居住居住環境における総合的な低炭素型ライフスタイル分析。

福島 綾子 文化財学

文化財の歴史調査研究、有形・無形の価値評価をおこなっています。
特に宗教遺産営繕活動の価値評価が最近のテーマです。
具体的な研究対象は、香港、九州、関東の近現代カトリック教会堂、そしてその営繕に携わる様々な人々です。

岩元 真明 建築デザイン


プノンペンのスタジアム

アジアにおける近現代建築のデザインに関する研究
20世紀の建築設計理論は西欧中心に構築されてきました。しかし、気候風土や文化の異なるアジア圏では独自の近現代建築が生まれています。これらを積極的に評価し、建築デザインの可能性を押し広げたいと考えています。現在の研究テーマは「東南アジアにおける近代建築運動」「蒸暑気候における建築デザイン」等です。

ロウ ワイ リオン デザイン教育カリキュラムの企画と開発

アジアの中高等教育においてプロダクトデザイン教育とデザイン教育カリキュラムを軸として、以下の研究を行っている。

  • 地域や地球規模の課題に対応するために、学部レベルで必要な知識とスキルの習得方法
  • デザイン専門家の育成に必要な知識とスキルの開発とデザイン教育エコシステムにおける企業の役割
  • アジアの中等教育におけるデザイン教育の特徴、および、デザイン教育プログラム、カリキュラム、教育・学習戦略と学習補助の開発

環境デザインテクノロジー

大井 尚行 環境心理・行動学,都市・建築環境工学(とくに光・視環境)

大井研究室では、環境心理学および建築空間と人間の心理・行動について幅広く研究しています。 おもな研究は、建築や都市(空間形態,光・照明,色彩,景観等)の環境心理評価、視環境(照明・光・色彩)デザインおよびその評価に関するものです。

  1. 照明の安全・快適性に関する研究
  2. 輝度分布に基づく視環境評価・設計手法の研究
  3. 建築・都市空間における人間の領域形成に関する研究
  4. 経路探索と空間認知に関する研究
  5. 日本人の美意識に関する研究
  6. 空間の開放感・分離感に関する研究
  7. 視環境のシミュレーション手法に関する研究
  8. 市街地景観の心理評価に関する研究
  9. 快適性評価のメカニズムに関する研究
  10. 環境の時間的変化による心理的効果に関する研究


輝度分布画像 照明デザインのために輝度データと人間の感じ方の関係を探ります


撮影してもらったもの・ことについて、特徴・印象などをできるだけその人の言葉どおりにインタビュー形式で記録します

吉岡 智和 建築構造学,耐震構造,鉄筋コンクリート構造

主に建築物の耐震安全性を向上させるための新たな技術や構法に関する開発研究を行っています。これまで,高力ボルト摩擦接合の高摩擦化,アルミニウム合金を摺動材とした新しい摩擦ダンパーの開発,建築物の地震時損傷を低減する摩擦ダンパーを用いた新たな構法の開発研究に取り組んできました。最近の研究テーマとして,マンションに多発する地震被害の軽減を目指し,RC造二次壁の地震時損傷評価や摩擦ダンパーを用いたRC二次壁の制振デバイス化に関する研究に取り組んでいます。加えて,木質構造の耐震性能向上のためその継手の高剛性・高靱性化を目的とした木質構造に適用可能なボルト摩擦接合部の開発も行っています。

井上 朝雄 建築構法、建築生産

井上研究室では、建築のしくみ、建築をつくるしくみ、建築を活用するしくみについて研究しています。

  • セルフリノベーションからみる住まいの主体性に関する研究
    DIY、女子DIY、リノベーション
  • 建築のデジタルアーカイブに関する研究
    BIM、アーカイブ、建築作品、ドキュメンテーション、デジタル化、部品
  • 人口減少時代における建築のあり方に関する研究
    空家、空きスペースの活用、島嶼地域、限界集落、居住環境維持
  • 海外における建築の調査研究
    ミャンマー、バングラデシュ、タイ、中国、台湾
  • 建材の開発と建築への適用に関する史的研究
    ガラス、タイル、カーテンウォール
  • ビルディング・スキンに関する研究
    ファサード、ファサードエンジニアリング、設計組織
  • 非構造部材の耐震性に関する研究
    天井、外壁、防煙垂れ壁、照明機器、設備機器、什器
  • 鋼製建具の耐食性に関する研究
    耐候性、錆、結露、飛来塩分量
  • 現代住宅の内装の色彩に関する研究
    内装仕上材料、色彩

今坂 智子 環境化学

工場や自動車など人間の社会生活に由来する環境汚染物質は、大気、海洋、土壌に広がっています。このため、人間の健康に影響を与える数多くの化学物質を測定する高度な技術を発展させることが必要です。
研究室では、PM2.5中の発がん性物質、食品中の農薬、あるいは身近な生活用品に含まれる香料中のアレルギー物質などの分光学的性質の理論予測や新しい分析システムの研究開発を行っています。

川本 陽一 建築・都市環境工学

現代は世界の約50%の人が都市に暮らしており、都市居住者はその内の大部分の時間を建物の内部で過ごします。そして人は生活する上で、周囲の環境から影響を受け、また人は周囲の環境に影響を与え、相互に作用を及ぼしています。居住環境の快適性を目指しつつ、自然環境への負荷を低減させる持続可能な社会の形成のため、主に温熱環境の観点から取り組んでいます。